山越駅

珍しく、前回より時系列に沿って話は続く。
要するに、真っ暗闇の海岸沿いを歩いてた黒いカエルさんが、それからどうしたのか。


八雲の隣、山越駅に辿りついたのは午前3時前だったか。
駅より、僕にとっての救いは、広々とした駐車場が併設してあるコンビニを発見した事だった。
どこまで続くか分からない真っ暗闇を歩く旅人は、恐らく誰もが、こうやって文明の灯りに安堵するものだ。
小さな無人の駅舎ひとつでは、やはり深夜に心細い。


一般には馴染みの少ないかもしれない山越を、僕もおさらい気分で説明しよう。

明治36年に開業されたこの駅だが、この段階ではまだ国鉄所有ではなく北海道鉄道である。
当初は「山越内」という駅名で、翌年から「山越」に名称変更された。
ヤムクシナイは、アイヌ語で「栗の樹がある川」の意味。

江戸時代に松前藩が平定したヤムクシナイ場所。
そのうち江戸幕府の直轄領となり、最北端の関所を設けたらしい。
辿りついた晩には暗くて文字も読めず 「なんで関所みたいな門があるんだろう」 と思ったが、その通りに関所だったのだ。

そんな歴史のある山越駅で、朝を待つ事になった旅唄い。
始発は、午前7時を回らないと通らないらしい。
「じゃあ、もう一駅くらい歩けば良いじゃないか」 と他人事なら言えたが、自分事なのでやめた。
もう、カエルさんのライフゲージが、肉体的にも精神的にも少なかったのだ。

まずは朝までどうしようかと、真っ暗な無人の駅舎に向かって引き戸に手を掛けたら、スッと開いた。
ラッキーといわんばかりに、即座に荷物を隅に置く旅唄い。
気分的には、カエルさん・1UPだ。

ところが、試しにうずくまってみたものの、暖は取れない事も判明。
そこで、コンビニ登場。
こんな山奥で荷物も取られるものかと、タッタカターとコンビニに向かう。
が 『時間つぶしに延々と立ち読み』 なんてマネの出来ない小心者の自分を思い出し、トイレを借りて暖かいコーヒーだけ購入して、駅舎に戻った。

ああ暖かいな~、と感じたのも束の間の錯覚。
夏の終わりの出発のために衣類の手持ちが少なかったので、総出で対応しても寒さが押し寄せる。
これは、朝までなんか持たない。
変に水分なんて補給したら、トイレが近くなるだけだった。
カエルさん、再びライフ減。
よって、トイレはあるかな~と探してみたら、キレイなトイレがあるある。まあ、無人とはいえ駅だし。

しかし、体内の水分を放出すると体温もそれだけ持っていかれる。
駅舎とトイレを往復する事3回目、僕はひとつの違和感に気付いた。
普通だったら手洗いのすぐ横にあるはずの、あのガーッと温風で手を乾かすヤツが、壁の妙な場所に、しかも半端な高さで設置してある。
なぜ? と思い、そっと覗いてみると

ヒーターだった。

北海道! 恐るべし!!

これって電源入るのかな、と思いながらも勝手にスイッチオンすると

ジワ~


点いた点いた~!!


その後は、腰の高さ辺りに設置されたヒーターで、裏表まんべんなく温めながら朝を待ったのだ。
カエルなのに、干物状態。
以上で、山越の夜は終了(笑)。

せっかくなんで、次回はこのまま函館編に続こうと思います。


                       写真参照 wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:JR_Hokkaido_Yamakoshi_Station.jpg

 
Googleマイマップ「西高東低~南高北低」
http://maps.google.co.jp/maps/ms?hl=ja&ie=UTF8&msa=0&msid=117155757855294201939.0004585263f0a10720fca&brcurrent=3,0x34674e0fd77f192f:0xf54275d47c665244,0&ll=42.250631,140.326653&spn=0.056163,0.140419&z=13